この記事は書きかけです。あとで加筆・訂正します。
I7の解釈
I7、すなわち、C major scaleで、ド・ミ・ソ・♭シが出てきたときにこのコードをどう解釈するか。
本来 Iの和音 はI△7となるべきで、I7にある短七度の音(m7)は、C major scaleにはない音である。
つまりはどこかの調から借りていることになる。それが借用和音か、一時転調であるかはいまは問題としないことにする。
これがどこの調からの借り物であるかをどうやって決定するか、その考え方を書いていく。
C major scaleでX7(minor 7th chord)が出てくるのは、G7だけである。そこ以外には出てこない。つまり、major scaleに対してはX7が出てくるのは、V7のみである。ここ以外の7th chord(II7とかIV7とか)はどこかの調のV7だと考えられる。
例えば、C7であれば、これは、CのP5(完全五度)下のFから始まるmajor scale(F major scale)のV7であると考えられる。このようにX7に出くわしたら、P5下(下属調)のmajor scaleのV7ではないかとまず疑うべきだ。
I7はいま書いたように下属調のV7である。これをI7 = V7 of IVのように書くことがある。I7はivの音から始まるmajor scale(下属調)のV7ですよ(あるいは、IVの和音に対するV7ですよ)、というわけだ。
II7の解釈
同じ理屈により、II7もiiの音のP5下の調(vから始まるmajor scale = 属調)のV7、すなわちV7 of V(属調のV7)とみなすことが出来る。
例えば、II7→Vという進行があったとしたら、これは属調で見るとV7→Iという進行である。
「II7→V」を見たら、「ははーん、属調でドミナントモーションをしてるのだな」と理解するとよい。
このことから、II7は、ドミナント(V)に対するドミナント、すなわち、「セカンダリードミナント」(第二級ドミナント、二番目のドミナント)と呼ばれる。
※ さきほど出てきたI7のように、ドミナント以外に対するドミナントも、ドミナントモーションを引き起こすので、これらもすべて「セカンダリードミナント」と呼ばれるが、典型的には、II7がセカンダリードミナントの代表格とされるので、「セカンダリードミナントと言えばII7(だけ)」のように思っている人も結構います…。
III7の解釈
III7もiiiのP5下であるviから始まるmajor scaleのV7とみなすことが出来る。すなわち、V7 of VIである。しかし、viから始まるmajor scaleは、現在の調の近親調にはない。属調の属調の属調なので、あえて書くならV7 of V of V of Vとも書けるが、これは近親調とは言わない。
だから、これは平行短調(viから始まるminor scale)のV7と解釈するのが普通である。
IV7の解釈
IV7もV7 of ♭VIIであり、これは下属調の下属調のV7であるからV7 of IV of IVのように書ける。ここが近親調であるかは難しいところだが、とりあえず近親調であると解釈しておく。
この和音はドミナントモーションで♭VII(♭VII△7)に行くわけだが、これがまさにナポリの和音なので、ナポリの和音に対するセカンダリードミナントとみなすことも出来る。ナポリの和音については後述。
V7の解釈
これは言うまでも借用和音ではない。
VI7の解釈
属調の属調のV7。VI7 = V7 of V of V。ここは近親調ではないが、II7が比較的使いやすい和音であるため、これに対してドミナントモーションを行なうための和音としてよく出てくる。 セカンダリードミナントに対するドミナント。
VII7の解釈
属調の属調の属調の属調のV7。ここも近親調ではない。平行短調のIIφ(=IIm♭5)がメジャー化した和音だと解釈するのが普通である。つまり、平行短調におけるセカンダリードミナントであると解釈する。
まとめ その1
- I7 = V7 of IV(下属調におけるV7。IVに対するセカンダリードミナント)
- II7 = V7 of V(属調におけるV7。V7に対するセカンダリードミナント。あるいは後述するドリアの和音)
- III7 = V7 of vi(並行短調におけるV7)
- IV7 = V7 of IV of IV(下属調の下属調におけるV7。あるいは後述するナポリの和音に対するセカンダリードミナント)
- V7 = V7(そのまま)
- VI7 = V7 of V of V(属調の属調におけるV7。IIやII7、IImに対するセカンダリードミナントとして用いられる)
- VII7 = V7 of V of vi(平行短調におけるVに対するセカンダリードミナント)
それ以外のV7に対する考え方
以上でI,II,III,IV,V,VI,VIIに対する7thコードの解釈が終わった。
♭がつく、♭VII7とかどう解釈するの?って話になるのだが、まずさきほどの表で、長調のほうは、属調の属調、下属調の下属調のように、2つ離れた調までは出揃った。
すなわち、長調として解釈すると近親調ではないことになってしまうので、そこから借用しているとは考えにくい。ゆえに、これらは平行短調がらみであるか裏コードであると考えるのが自然である。
平行短調のほうは属調の属調、下属調の下属調が出ていない。vi minor scaleの属調の属調はvii minor scaleでこのV7は♭V7であり、これはあとで出てくる。vi minor scaleの下属調の下属調は、v minor scaleで、これのV7はII7になり、これは既出である。
II7がセカンダリードミナントではないケース
II7→Vと進行するならII7 = V7 of Vだと解釈してセカンダリードミナントだと言うことが出来る。しかし、II7→III7と進行するならどうだろうか。
III7は先にも書いたように平行短調のV7である。ということはII7は平行短調のIVm7がメジャーの和音化したものであるということが出来る。これはドミナントモーションのために必要なのではなく、単に響きが美しいから使っておけ、みたいな感じ(なのだと思う)
このII、もしくはII7(平行短調のIV7)は、ドリアのIVと呼ばれる。
この「ドリア」(Doria)は古代ギリシャの部族名らしい。教会旋法のドリアンモードのドリアであり、X dorian scaleではnatural minor scaleからすると6度が半音上がるので(major scaleからすると3度、7度が半音下がる)、この和音のように「natural minor scaleで6度が半音上がっているのはdorian scaleを使っているからだ」と解釈し、ドリアのIVという名前がついているわけである。
♭VII7の解釈
まず♭VII7ではなく、♭VIIの説明からする。
♭VIIは和声学では平行短調のIIφのrootが下方変位(要するに半音下がった)したものだとみなされる。
これの第一転回形をナポリ音派が好んで使ったことからナポリの6(第一転回形だと最低音と最高音の間が6度となるため)と呼ばれている。Napoli はイタリアの都市名である。
ただし、ナポリの和音では4和音化するときに♭VII△7となる。M7でないとスケール音ではないからである。
このため、♭VII7は、普通はナポリの和音とはみなさない。
V7のトライトーン・サブスティテューション(いわゆる裏コード)と解釈されることが多い。裏コードについては次に書く。
裏コードとは?
♭II7は、iv音とvii音を持っている。これはV7のトライトーンと同じである。だからV7の代わりになるだろう、という適当さで用いられるのが裏コードである。
X7のrootをトライトーン離れたところに変更した7th chordが裏コードに当たる。
例
- ♭D7の裏コードはG7
- E7の裏コードはB♭7
- F7の裏コードはB7
- ♭II7の裏コードはV7 逆に、裏コードの裏コードは元のコードである。
- G7の裏コードは♭D7
また、IIm→V7→Iという進行をIIm→♭II7→Iに変更するとベース・ラインの半音下降形が作れる。(これ以外の用法で♭II7を使うことはほとんどない)
よって、♭VII7は平行短調の♭II7であるから平行短調のV7の裏コードである。
♭II7の解釈
もうすでに出た。V7の裏コードである。
♭III7の解釈
VI7の裏コードである。
♭VIの解釈
II7の裏コードである。
♭V7の解釈
I7の裏コードである。
あるいは、平行短調の下属調の下属調のV7。V7 of IV of IV of vi。 長調でのVI7→II7→V7→Iは短調だと♭V7→♭VII7→III7→VIm。
まとめ その2
- ♭II7 = V7の裏コード。頻出。
- ♭III7 = VI7の裏コード
- ♭V7 = I7の裏コード
- ♭VI7 = II7の裏コード
- ♭VII7 = III7(短調のV7)の裏コード。頻出。ただし、♭VIIだとナポリの和音かも知れないので注意。
裏コードなので長調・短調のV7の裏コードが一番使える。あとは…ぼちぼち。