ピアノのメカニカルトレーニングについて
ピアノ演奏のときに、指が正確に速く動くか。これらのためのトレーニングをメカニカルトレーニングと言う。 しかし音楽家として必要な能力は、他にもたくさんある。
- リズムの正確性
- タッチの正確性
- 聴音能力
- 視唱能力
- 初見能力
- 演奏解釈
- アドリブ演奏
- etc..
こうして見ると作曲〜演奏というのは、いくつもの全く異なる能力が必要となる複合的な芸術活動であると言える。だから、どうせ時間を費やすならばたくさんの能力が同時に訓練されるようなメソッドを採用するのが望ましい。
ハノンの問題点
まず、ハノンの問題点をいくつか挙げてみよう。
ハノンのほとんどの曲は二度ずつ音が上がっていき、折り返し地点で今度は二度ずつ音が下がっていく。この上がっていくときの指の動きが一定なので自分が何の音を鳴らしているか意識しなくとも弾ける。メカニカルトレーニングとしてはこれでもいいのだが、これだと聴音の訓練にはならない。自分の鳴らしている音を聴いて、一音、一音、何の音か理解しながらトレーニングすれば聴音の訓練になるのに、非常にもったいない話である。
次に、ハノンにおいて、ほとんどの曲は右手と左手が同じ音(オクターブ違いで)である。これでは同時に二つの音を聴きとる訓練にはならない。そういう意味でやはり聴音の訓練としても不十分である。
それから、黒鍵を弾く練習にならない。ハノンのうち前半は白鍵ばかりである。この意味においてメカニカルトレーニングとしても少し物足りない。
また、同じ動作の反復なので1小節目を読んだあとは、楽譜を見ずとも楽々弾けてしまう。この意味で初見トレーニングにもならない。
ハノンのメリット
逆にハノンのメリットを挙げてみよう。
- 音の粒を揃える訓練になる(指によって音の強弱があってはならない)
- 初見能力が低い段階でもメカニカルトレーニングが出来る
- 指の運動能力・持久力を高める(指の筋肉のトレーニング)
ピシュナのメリット
まず、ここで言うピシュナとは次の楽譜を意味する。
ピシュナはスケール練習になるし、右と左で異なる音を鳴らすので右と左で独立した音を演奏する訓練や、2音の聴音の訓練にもなる。(そういう意識をもってやれば)
また、ハノンのような単調な繰り返しではないので、初見演奏の訓練にもなる。(そういう意識でやれば)
ピシュナのデメリット
ピシュナのデメリットを挙げるとすれば初見能力がないと演奏できないことが挙げられる。ハノンほど優しくない。
また、ハノンほどメカニカルトレーニングに力点がないので、音の粒を揃えることや、指の筋力的なトレーニングにはなりにくい。
結論
「ハノンか、ピシュナか」というのはピアノ教師の間でも意見がわかれるところであるが、学習の段階に応じて切り替えればいいのではないかと私は思う。
それより、「ハノンを何の訓練のつもりでやっているのか」(単なるメカニカルトレーニングなのか、それ以上のものを求めているのか)というのはもっと意識すべきだと思う。
ピアノの教師によっては「ハノンは指のトレーニングなので、何の音が鳴っているかとかどうでもいいので、ともかく、指を動かしましょう」みたいな指導がなされることがあり、非常に残念に思う。
それはハノンやピシュナに限らずであるが、何らかの曲をピアノで演奏する訓練をしている以上、いくつもの音楽的な能力が同時に鍛えられている(鍛えられる)はずである。音楽家にとってどのような能力が必要とされるのかを考え、そしてそれを自覚しながらトレーニングすべきであろう。
将棋の方から来させて頂きました 初めてコメントを残させて頂きます 4歳からピアノをやっているにも関わらずやる気がないまま高校生辺りまでダラダラ続けていたせいで経歴に見合わぬピアノの腕になっている者です
もう随分前の記事なので今更かもしれませんし大した内容で無いかもしれませんが
ハノンの「黒鍵を使う練習にならない」という所に関して、適当な調に転調させながら弾けば黒鍵を使う練習にすることも可能だとピアノの先生から教わった事が有ります
ハノンは昔から単調な練習だという事は言われていたらしく、ただ単純に練習するよりも、まず普通に弾きこなせるようになったら変わったリズムを付けたり上で述べたとおり転調して弾くなど、様々な工夫はされていたそうです(ただしそういった練習方法と言うのは今ほど情報が様々な所で共有されていた訳ではなかったので、自分で見つけるか自分がピアノを習っている先生に練習方法を聞く といった手段でしかあまり知ることは出来なかったそうですが)
>「ハノンを何の訓練のつもりでやっているのか」(単なるメカニカルトレーニングなのか、それ以上のものを求めているのか)というのはもっと意識すべきだと思う。
と言う所に関してなのですが
個人的にはハノンは単なるメカニズムトレーニングとしてやっている訳ではないが、それ以上のものを求めるなんて言う大層な物ではないんじゃないかと思います どちらかと言うとメカニズムトレーニング+でちょっと何かできれば みたいな感じなんじゃないかと(結局「それ以上」の部分を言い換えただけで実質変わんねえじゃねーか と言う感じではあるのですがそれ以上のものを求めると言うとハノンのトレーニングにもっとドデカイ物を求めるみたいな感じにちょっと思えたので)
そもそもハノン自体本来指の運動を効率的に行うために作られたものであるはずなのであって、それにあれもこれもと欲張って入れようとする事自体がちょっと違うのではないかなと思います
あくまで指のトレーニングは指のトレーニングだという事で割り切って、指がスムーズに動かせるようにやる 他の訓練はまた他の所でやれば良いのでは無いかと思います
非効率だと言われればそれまでかもしれませんが、ハノンはそもそも指のトレーニングとして優秀だという事で持ち上げられたのであって、これ一冊あればピアノにおいて必要な能力全てマスター出来るぜすげえって言う事で持ち上げられたものじゃ無い訳ですしそれで良いんじゃないかと
もっとも、じゃあハノンは漠然と弾いてりゃ良いのかという訳でも無く、あくまで指のトレーニングという事を念頭に置いて指の力は強く、無く一音一音どの音が鳴っているのか意識しながら正確に、みたいな指のトレーニング+弾くうえで必要な基本的な事をちょっと意識して みたいな弾き方が出来ればハノンはそれでいいんじゃないかなぁと思います
以上の2点がなんとなく気になったところです あくまで文頭で述べたとおり経歴だけ立派なアマチュア同然の言ってる事なので「いやこれはどう考えても違げえだろ」とか「何言ってんだこいつ」と言ったところが有ればアホじゃねーのと一蹴りしていただいて構いません
後現在絶賛真夜中のラブレター状態で書き込んでいるので文のところどころおかしいかもしれませんが何卒ご了承下さい
長文失礼しました
余談ですがハノンのように教則本で長年支持されている物はちょっと珍しいらしいですね
ちょっと前までは当然のように使われていたバイエルなどはすっかり支持されなくなりましたし
> ハノンの「黒鍵を使う練習にならない」という所に関して、適当な調に転調させながら弾けば黒鍵を使う練習にすることも可能だとピアノの先生から教わった事が有ります
はい、そうですね。まあ、作曲系の人やジャズなどに親しみのあるピアノプレイヤーは、移調は当たり前と言う感じなのですが、クラシック畑の人は移調して演奏することってほぼ無くて、「この曲はEs durだからこそいいのだ」みたいな話になりがちなので、ピアノの先生でもあまり移調訓練の必要性を感じていない人が多かったりするので、ハノンで移調して演奏しなさいと指導する先生は稀なような気はしますが。